貯筋運動とは

貯筋運動プロジェクト

貯筋運動プロジェクトは、福永哲夫氏(鹿屋体育大学学長)が提唱する、毎日行いながら貯筋していく道具のいらない筋力トレーニングを、健康運動指導士、健康運動実践指導者の方々に総合型地域スポーツクラブで広げていただき、これからの超高齢社会において、できるだけ多くのみなさんのQOLを高く長く保つことを目指すプロジェクトです。

貯筋のすすめ

貯筋のすすめ ~いつまでも自分で行きたいところに行ける体でいるために~
年をとっても自立した生活を送りたいと願う気持ちは、誰もが持っていることでしょう。そのためには、筋肉を一定水準以上、維持していなければなりません。人の身体は年とともに変化していきます。筋肉や神経、骨、血管などあらゆる組織の諸機能は加齢とともに低下する傾向にあります。人間である以上、これらの老化現象はさけることはできません。しかし、老化に運動不足が加わることで、これらの機能低下がさらに加速している人がたくさんいます。豊かで機械化された便利な現代社会においては、日常生活で身体を動かす機会が減り、このような状況下で長く生活していると、ますます運動機能は低下してしまいます。

いつまでも元気で自立した生活を送るためには、生活環境に適応できる身体能力(この能力のことを『生活フィットネス』とよびます)が必要です。生活フィットネスは年とともに低下していきますが、この低下のパターンには大きな個人差があります。平均的な生活を送っている人と比べて、よく体を動かしている人は年をとっても生活フィットネスを高い水準に維持しています。一方、運動不足が続くと生活フィットネスは低下していきます。また、病気などをきっかけにして急激に生活フィットネスが低下してしまう場合もあります。

生活フィットネスには筋力、持久力、柔軟性などさまざまな要素がありますが、なかでも特に重要な要素は「脚筋力」でしょう。脚筋力が低下するといすから立ち上がる、歩く、階段を昇るといった日常生活運動がスムーズに行なえなくなります。また、歩行時に脚が高く上がらず少しの段差につまずいてしまうことや、バランスを崩したときに身体を立て直したり踏ん張ったりする筋力が低下していることが、転倒の原因となっています。高齢になると骨の強度が弱まっている場合が多く、転倒により骨折してしまうと、寝たきり生活を余儀なくされる場合も少なくありません。

自立した日常生活を送ることができなくなる機能水準を『寝たきりライン』とよぶことにします。寝たきりラインに近づくということは生活能力に余裕がなくなるということです。欲しいものがあったときに貯金があれば買うことができます。貯金は「ゆとり」でもあるわけです。筋肉もお金と同じでいざというときのために「貯筋」しておくことが必要です。例えば、突然病気になって入院しなければならなくなっても、筋肉の貯筋にゆとりがあれば、病気や怪我が治ったときにまた普通の生活に戻ることができます。しかし、病気や怪我で入院している間に貯筋が減ってしまい、寝たきりラインを下回ってしまうと、病気は治ったのに歩けなくなってしまったということにもなりかねません。『備えあれば憂いなし』は筋肉にもあてはまるのです。

お金は借りることができますが、筋肉は借りることができません。自分で貯めておくしかないのです。そして筋肉を貯める唯一の方法は、『使うこと』なのです。

貯筋運動ステーションの効果

~毎日コツコツ貯めることが大切~
筋力を向上させるためには、日常生活において発揮される筋活動量以上の強度の条件を満たすことが必要です。これまでの福永らの研究結果によると、日常生活における筋活動量はほとんどが最大筋力の5%以下の強度で、歩行動作等においても下肢筋群は30%未満の筋活動量しか示していないことが確かめられています。したがって、下肢筋にトレーニング効果が期待できる運動様式としては、通常歩行に見られる以上(30%以上)の強度条件を満たす運動を日常生活の中に組み込む必要があります。このような筋力トレーニングの強度の条件を満たす運動を、自宅で特別な器具なく、簡単に実施できれば、一般の高齢者に活用されることが期待されます。

そこで、貯筋運動プロジェクトでは、自体重を利用して効果的な筋力維持・アップのできる筋力トレーニングプログラム「貯筋運動」を、地域のスポーツの中核を担う総合型地域スポーツクラブと、健康づくりのための運動指導者である健康運動指導士を組み合わせ、週1回程度、貯筋運動を中心とする集合型運動教室“貯筋運動ステーション”を設置しました。このステーションの特徴は、住民の「身近」で「継続可能」な場を確保するとともに、疾病、障害を持つことが多くなる高齢者でも「安全」に、「効果」を上げられる指導を実現できたことです。

本研究プロジェクトおよびこれまでの福永らの研究結果から、以下の点が明らかになりました。

1、加齢とともに筋萎縮が生じるが、大腿四頭筋の萎縮が最も著しく、50歳以降は年間約1%の萎縮が見られる。
2、大腿四頭筋は歩行や椅子立ち上がりなど日常生活を遂行するに最も必要な筋群であるので、この筋の萎縮は正常な日常生活を保障できないことを意味する。
3、大腿四頭筋の筋厚(BMIあたり)が1.0以下になると歩行が困難になる。


[大腿部筋厚÷BMIに見られる年齢変化]

4、大腿四頭筋の筋萎縮を防ぐには、簡単に実施可能な筋力トレーニング(貯筋運動プログラム)の実施が望まれる。


[貯筋運動ステーションによる脚筋力の前後比較]


[貯筋運動ステーションによる皮下脂肪と筋肉の変化(男性73歳・大腿部前面の超音波画像)]

引用:公益財団法人 健康・体力づくり事業財団HPより

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